「在宅ワーク用に昇降デスクを買いたいけど、賃貸だと退去のときに床の修理代を請求されない?」
電動昇降デスクは重い家具です。
たとえばFlexiSpotの「E7H」は製品重量が約35kgと紹介されており、
天板やモニターを載せるとさらに重くなります。賃貸に住んでいる方が、床への影響を心配するのは当然です。
この記事では、柏・松戸エリアで賃貸仲介を担当している宅建士が、
国土交通省のガイドラインをもとに「どこまでが大家さんの負担で、どこからが自分の負担になるのか」を
整理します。
昇降デスクならではの注意点と、設置前にやっておきたい対策も紹介します。

執筆:ましろ
宅地建物取引士/TNコーポレーション 賃貸仲介担当(実務4年)/賃貸物件オーナー
柏・松戸エリアでお部屋探しのお手伝いをしています。貸す側と借りる側の両方の立場から、賃貸暮らしで本当に役立つ情報をお届けします。
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結論:へこみは大家さん負担、引きずり傷は自分負担

先に結論をまとめます。
- デスクの重みでできた床のへこみや設置跡は、通常の使い方による損耗として、原則大家さん(貸主)の負担です。
- 組み立てや移動で床を引きずってできた傷は、不注意による損傷として、入居者(借主)の負担になります。
- ただし、契約書に特約がある場合は、その内容が優先されることがあります。
つまり「置くこと」自体は問題ありません。気をつけるべきは「置くまで」と「動かすとき」です。
原状回復の基本ルール

退去時の「原状回復」は、部屋を新品の状態に戻すことではありません。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、費用の負担を次のように分けています。
- 大家さんの負担:年月による劣化(経年変化)と、普通に暮らしていて生じる損耗(通常損耗)
- 入居者の負担:わざと・不注意でつけた傷、手入れを怠ったことによる損傷(善管注意義務違反)、通常の範囲を超える使い方による損耗
床まわりについて、ガイドラインが例として挙げている線引きは次のとおりです。
| 大家さんの負担になるもの | 入居者の負担になるもの |
|---|---|
| 家具の設置による床・カーペットのへこみ、設置跡 | 引越作業などで生じた引っかき傷 |
| フローリングのワックスがけ | 飲み物などをこぼした後、手入れ不足でできたシミ・カビ |
| 日照や建物の雨漏りによるフローリングの色落ち | 不注意で雨が吹き込んだことによるフローリングの色落ち |
| 次の入居者のための畳の裏返し・表替え | 冷蔵庫下のサビを放置して床を傷めた跡 |
出典:国土交通省「原状回復の条件に関する様式」(ガイドライン別表3)
ポイントは、同じ「床の傷み」でも、原因が「置いていたこと」か「動かしたこと・放置したこと」かで負担が変わる点です。
昇降デスクならではの注意点5つ

普通の机と違い、昇降デスクは「重い」「高さが変わる」「配線が多い」という特徴があります。
退去時のトラブルにつながりやすいのは次の5点です。
- 組み立て・移動で床を引きずる 重いフレームを床の上で引きずると、引っかき傷になります。
これは入居者負担になる典型例です。E7Hは梱包込みで約39kgあるとされ、1人で運ぶのは大変です。
移動は2人で持ち上げて行いましょう。 - キャスター付きの椅子による擦り傷 デスクとセットで使う椅子のキャスターは、毎日同じ場所を往復するため、
想像以上に床が傷つきます。傷が残れば、不注意による損傷と判断される可能性があります。
また、キャスターが転がる音は下の階に響きやすく、騒音トラブルの原因にもなります。
椅子の下には、チェアマットを敷いておくのがおすすめです。 - 脚にかかる重さの集中 重さによるへこみ自体は原則大家さん負担です。
それでも、脚の下に保護パッドを付けておけば、退去時の話し合いがスムーズになります。
脚の裏に貼る家具すべり材(ニチアスの「カグスベール」など)を使うと、へこみ対策になるうえ、
掃除や模様替えで少し動かすときも床を引きずらずに済みます。 - 高さを上げたときの接触 E7Hは高さを約63〜130cmの範囲で変えられます。
上げたときに窓枠、棚、カーテンレールに当たらないか、事前に確認が必要です。
ぶつけてできた壁や建具の傷は、入居者負担になる可能性があります。 - 配線のための壁の穴 ガイドラインでは、画鋲やピン程度の穴(下地ボードの張り替えが不要なもの)は
大家さん負担とされています。逆に、ケーブルを固定するためにネジを打つなど、
それを超える穴を開けると入居者負担になる可能性があります。
配線は壁ではなく、デスクの天板裏にまとめるのが安全です。
大きい家具を購入する際にはまず運搬経路の確認をしておきましょう。
私が担当したお客様でも新居になってデスクを購入したけどどうしても入らず断念したという
事例がしばしばあります。
契約書の「特約」は必ず確認

ここまでの話は、あくまで原則です。賃貸借契約書に「床の補修費用は借主負担」のような特約があれば、
そちらが適用される場合があります。
ただし、入居者に通常より重い負担を課す特約は、何でも有効になるわけではありません。ガイドラインでは、有効になる条件として次の3つを挙げています。
- 特約が必要で、暴利的でないなど、客観的・合理的な理由があること
- 入居者が、通常の原状回復を超える負担を負うことを認識していること
- 入居者が、その負担を受け入れる意思表示をしていること
出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」 7ページ
昇降デスクを置く前に、契約書の「原状回復」や「特約事項」の欄に、床やフローリングに関する記載がないか確認しておきましょう。分からない場合は、契約した不動産会社や管理会社に聞くのが確実です。
契約の際は特約について必ず確認し、理解できるまで宅建士の方に相談するのがベターです。
後で知らなかったでは遅いこともありますのでここはしっかり確認しておきましょう。
傷をつけてしまったら:火災保険を確認

うっかり床や壁を傷つけてしまった場合、入居時に加入した火災保険で補償される場合があります。
賃貸の火災保険には、多くの場合「借家人賠償責任」の補償が付いています。
偶然かつ突発的な事故で部屋を傷つけ、大家さんへの賠償責任を負ったときに使える補償です。
たとえば、引っ越し直後やデスクの組み立て中に、
家具を壁にぶつけたり、床に落としたりした場合が当てはまる可能性があります。
ただし、注意点が2つあります。
- 補償の範囲は契約によって違う:「不測かつ突発的な事故」が対象に含まれているかどうかで変わります。
- まず保険証券を確認しましょう。
- 退去後は使えない:退去すると補償がなくなります。傷をつけたら、その時点で保険会社に連絡し、退去時までため込まないことが大切です。
出典:マネーフォワード クラウド「賃貸の火災保険で補償されるもの」
保険の対象範囲だったけど連絡するのが遅く、保証してもらえないこともあるので
出来る限り早く連絡するようにしてください。
設置前にやっておきたい対策

退去時に「この傷は入居前からあった」「これは自分のせいではない」と説明できる状態をつくっておくことが、
一番の対策です。
- 設置する場所の床を写真に撮っておく:国土交通省も、入居時に傷の箇所を写真で残しておくことが重要だとしています。日付が分かる形で保存しておきましょう。
- 段ボールや毛布で床を養生してから組み立てる:組み立ては設置場所のすぐそばで行い、完成後に長い距離を動かさないようにします。
- デスクの脚には家具すべり材、椅子の下にはチェアマットを敷く:へこみと擦り傷の両方を防げます。
- 一番高い位置まで上げて、周りに当たらないか確認する:窓枠、棚、カーテン、エアコンの配管などを見ておきます。
- 配線は天板の裏でまとめ、壁に穴を開けない
出典:国土交通省 資料
まとめ

賃貸でも、昇降デスクは安心して置けます。デスクの重みによるへこみや設置跡は、原則大家さんの負担です。
注意したいのは、組み立てや移動での引きずり傷、椅子のキャスターによる擦り傷、高さを上げたときの接触、壁の穴です。これらは入居者の負担になりやすいので、設置前の写真記録と床の養生で防いでおきましょう。
契約書の特約も、事前に一度確認しておくと安心です。
この記事で例に挙げた昇降デスク「FlexiSpot E7H」はこちらです。
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