SNSで広まる「買った方が得」という主張

「賃貸は家賃を払い続けるだけで何も残らない」「マイホームを買えば資産になる」「早く買えば買うほど得をする」
こうした言説がSNSやYouTubeで広まっています。
確かに説得力のある主張に見えます。しかし、26年間にわたって柏市・流山市を中心とした東葛エリアで売買仲介に携わってきた立場から申し上げると、この主張には重要な前提が抜け落ちているケースが少なくありません。
この記事では、SNSで広まっている「買った方が得」論の根拠をひとつひとつ検証し、何が正しくて何が偏っているのかを整理します。購入か賃貸かで悩んでいる方に、判断の軸を持っていただくことが目的です。

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「買った方が得」論の主な根拠

SNSで語られる「買った方が得」論には、主に以下の3つの根拠が挙げられることが多いです。
① 家賃は「掛け捨て」だが、ローンは「積み立て」になる
賃貸に支払い続ける家賃は手元に何も残らないが、住宅ローンを返済すれば不動産という資産が残る、
という主張です。
②賃貸に隠れたコスト
賃料は以下のように決められます。
物件ローン(借金)+利益+その他コスト(固定資産税、都市計画税、火災保険料、管理委託費、減価償却コスト)
+空室リスクの上乗せ
などを計算して賃料を決めていきます。
つまり、賃料を払って賃貸に住むということは大家のコストと利益を肩代わりしているということになります。
② 住宅ローン金利は今でも歴史的低水準にある
住宅ローンの変動金利は2025年以降やや上昇傾向にあるものの、他の借入商品と比較すると依然として非常に低い水準です。これを活用しない手はない、という考え方です。
③ 売却時に利益が出ても3,000万円の特別控除がある
マイホームを売却して利益が出た場合、一定の条件を満たせば最大3,000万円まで譲渡所得が非課税になる制度があります(租税特別措置法第35条)。これが購入のメリットとして語られます。
これらの主張自体は事実です。
問題は、これらがあたかも「誰にとっても当てはまる普遍的な真実」として語られる点にあります。
3つの主張に潜む「見えていないリスク」

リスク①:マンションの「隠れコスト」を見落としている
「ローンの支払いが家賃と同じくらいなら買った方がいい」という比較は、表面的な数字だけを見ています。
マンションを購入した場合、毎月のローン返済に加えて以下のコストが継続的に発生します。
| 項目 | 月額目安 |
|---|---|
| 管理費 | 1〜3万円 |
| 修繕積立金 | 1〜3万円(築年数で増額) |
| 固定資産税(月換算) | 1〜1.5万円程度 |
| 火災・地震保険(月換算) | 数千円 |
※物件に寄りますのでご参考程度にお考え下さい
修繕積立金は特に注意が必要です。新築時は低く設定されていることが多く、
築年数が経過するにつれて増額されます。
タワーマンションではエレベーターや外壁など大規模修繕のコストが膨大になるため、
修繕積立金の不足が全国的に問題視されています。
実際に弊社に相談に来られた方の中にも、「ローンと管理費・修繕積立金を合わせると当初の想定より月3〜5万円高くなっていた」というケースがありました。
SNSで「家賃と同じ支払いで買える」と見て購入を決めたものの、
トータルのコストを把握していなかったのです。
リスク②:建物の価値は確実に下がる
「不動産は資産になる」という主張は正しいのですが、
正確には「土地は資産になる可能性がある。建物は経年とともに価値が下がる」です。
国土交通省が公表している「中古住宅流通・リフォーム市場の現状」によると、
木造戸建て住宅の建物価値は築10年で新築時の約50%、法定耐用年数である築22年を超えるとほぼゼロに近づきます(国土交通省、中古住宅流通・リフォーム市場の現状)
| 築年数 | 建物価値の目安(木造) |
|---|---|
| 築5年 | 新築時の約75% |
| 築10年 | 新築時の約50% |
| 築15年 | 新築時の約25% |
| 築22年以上 | ほぼ土地値のみ |
つまり「資産が残る」というのは、建物が建っている土地の価値次第です。
人口が増加・維持されているエリア、駅近、再開発が進む地域であれば土地価値が維持・上昇しますが、
人口減少エリアでは土地価値も下落するリスクがあります。
リスク③:「得した人の話」しか目に入っていない
SNSで語られる「買って得した」という情報には、構造的な偏りがあります。
・家を買って値上がりした人は積極的に発信する
・損をした人・後悔した人はほとんど発信しない
この現象を「サバイバーシップバイアス」と言います。成功事例だけが可視化され、失敗事例は表に出てこないため、実態より「買った方が得」という印象が強まります。
リーマンショック後に価値が大幅に下落したエリアを購入した方、
人口減少が進む地方で売れなくなった物件を抱えている方の声はSNSにはほとんど出てきません。
生涯コストの比較:「どちらが安いか」より重要なこと

京葉銀行の試算では、毎月の支払いを同水準(12万円)に揃えた場合、
50年間の生涯コストは持ち家と賃貸でほぼ同額という結果が出ています(京葉銀行、賃貸と購入どっちが得?)。
ただし、この比較には注意点があります。
持ち家は50年後に「不動産という資産」が手元に残ります。一方、賃貸は50年後に何も残りません。
この点では、長期的には持ち家の方が有利と言えます。
しかし「生涯コストがほぼ同じ」という前提は、以下の条件を満たした場合に限られます。
- 同じ地域・広さ・築年数の物件で比較している
- 引越しの回数が少ない(賃貸で何度も引越すとコストが増える)
- 修繕費・管理費などの隠れコストを正確に計上している
- 購入した物件の価値が大きく下落しない
「どちらが得か」という問いに対して、現実には「条件次第でどちらも得になりうる」が正直な答えです。
「買った方が得」になる条件、ならない条件

26年間の現場経験をもとに整理すると、以下のような傾向があります。
購入が有利になりやすい条件
- 同じエリアに10年以上住み続ける見通しがある
- 購入するエリアの人口・需要が安定または増加傾向にある
- 駅から徒歩圏内など、流通しやすい立地である
- ローン返済額+管理費・修繕積立金が、同条件の賃貸家賃を下回る
- 将来、売却や賃貸転用の選択肢を残せる物件である
賃貸を継続する方が合理的な条件
- 転勤・転職の可能性が高い
- ライフスタイルや家族構成が変化する見込みがある
- 購入予定エリアの人口減少が進んでいる
- 修繕積立金の滞納・不足が懸念されるマンションである
- 頭金・諸費用を用意した上で、生活防衛資金も確保できていない
どちらが「得」かという議論の前に、「自分の状況にとって合理的かどうか」を判断することが先です。
本当に大切なのは「得か損か」ではない

26年間、様々なお客様の不動産売買に関わってきた中で感じることがあります。
そもそも、家とは自分や家族が安心して暮らすための場所です。
「そこで住んで心地よい」と感じるなら、それが100%正しい選択です。
最近は値上がりや資産形成といった情報が溢れていますが、
家の一番重要な役割を見失っている方が増えているように感じます。
投資目線でもっとも合理的な選択をしようとするのは理解できますが、
それ相応の勉強量と市場タイミングの運も必要であることも事実です。
購入を検討する前に、一度立ち止まって「自分にとって家はどのような役割を果たすものか」を考えてみてください。
- 家族が安定して暮らすための基盤なのか
- 老後の安心感を得るためのものなのか
- 資産運用の一環として考えているのか
これによって、持ち家が合うのか賃貸が合うのかは変わってきます。
一方で、現実的な話をすると、住宅ローンの金利は他の金融商品と比べれば依然として低水準であり、
3,000万円の譲渡所得特別控除という強力な税制優遇もあります。
正しい知識を持ってから判断すれば、購入は決して高いハードルではありません。
情報を鵜呑みにせず、ご自身でしっかり調べ、必要であれば専門家に相談した上で判断することが、
後悔のない住まい選びにつながります。
まとめ:SNSの「得論」に踊らされないための3つの視点

SNSで広まる「不動産は買った方が得」という主張には、以下の偏りが含まれている可能性があります。
- 隠れコストを除外した比較になっている(管理費・修繕積立金・固定資産税など)
- 成功事例だけが可視化されている(サバイバーシップバイアス)
- 「誰にとっても」という前提がそもそも成り立たない(立地・ライフスタイル・家族構成による)
購入が合理的かどうかは、物件の条件・エリアの将来性・ご自身のライフプランによって異なります。
「SNSで見たから」「周りが買っているから」ではなく、自分の状況を正確に整理した上で判断することが重要です。
柏市・流山市・松戸市など東葛エリアでの不動産購入・売却についてご相談がある方は、ぜひ弊社にお声がけください。26年の地域密着経験をもとに、個別の状況に合わせたアドバイスをお伝えします。
参考資料
- 国土交通省「中古住宅流通・リフォーム市場の現状」
- 東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」
- 京葉銀行「賃貸と購入どっちが得?住宅購入のメリットと資産の考え方」
- 租税特別措置法第35条(居住用財産の3,000万円特別控除)
- LIFULL HOME’S「築年数で家の資産価値はどう変わる?」




